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編集部おすすめの京都

編集部おすすめの京都

狭いからこそ 奥深き世界へ

京都、小さな小さな名店

髪飾り、唐板、針、筆。ひと筋に商ってきたからこその懐の深さを感じさせる専門店が点在するのもまた京都の面白さ。3坪4坪の小さな空間であってもスタイルを変えることはなく長きにわたり愛され続けている店にはどんな秘密があるのでしょうか。
 
驚くほど小さな空間でお商売をしている店々。京都を旅する人がらしさを感じる瞬間は街のあちこちに溢れていますが、そんな店へと足を運んだときも、ああ京都と思うことでしょう。髪飾り、唐板、針、筆。それは一意専心にもの作りをし、商い続けてき老舗の醍醐味が詰まった極小空間なのです。
 
お客と店主との距離が近くなり、自然とコミュニケーションが発生するのも小さな店ならでは。それが思いも掛けない出合いをもたらしてくれることもしばしばです。もちろん商うものが優れているという前提あってのこと。伝統に裏打ちされた京都ならではの醍醐味です。
  

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店内には200種類もの筆がずらりと並び、その様子は壮観。

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香雪軒(筆やさん)  

書道の中心の街・京都でぴたりと馴染む筆を知る
 
富岡鉄斎、武者小路実篤、谷崎潤一郎ら、名だたる文人に愛されてきた「香雪軒」。「屋号は2代目の時代に富岡先生に付けていただいたものなんです。谷崎先生が原稿を書く筆も、うちで誂えていただいておりました」と5代目の長岡輝道さん。『瘋癲老人日記』には、主人公が買い物に行く「河原町二條東入ル筆墨商竹翠軒」として仮名で小説に登場するシーンもあるほどです。筆を買い求める人は老若男女。太さや手の馴染みから、書き味まで、用途や好みは千差万別とあって「どのような書体の字を書かれるのか、どのような絵を描かれるのかをまずは尋ねます。その後にじっくり試し書きをしてもらうんです」。今はなきチンチン電車が通ることに伴って二条通が広げられ、店の広さは半分ほどになってしまったというものの、長岡さんの言葉に筆への並々ならぬ愛情と、品物への自信が垣間見えます。
 
 

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右から毎年1月に宮中で開かれる歌会のお題から連想した色で毛を染めた御題筆1,400円、長鉾宿紫毫6号2,100円、3号4,500円。

 

2016年10月04日掲載

香雪軒

文豪も愛した老舗で好みの筆に出合う喜び

江戸時代後期に筆職人だった初代長岡亦四郎により創業。3代目までは店主自らが筆を作って商い、それ以降は職人に注文してオリジナルの筆を扱い続けてきた老舗。狸や馬など同じ動物の毛を使っても、それぞれ毛の性質や配合で書き味が異なるため店内には200種類もの筆がずらりと並び、その様子は壮観。筆のほか、文房四宝の硯や墨、紙も扱います。富岡鉄斎、武者小路実篤、谷崎潤一郎ら、名だたる文人に愛されてきた「香雪軒」。「屋号は2代目の時代に富岡先生に付けていただいたものなんです。谷崎先生が原稿を書く筆も、うちで誂えていただいておりました」と5代目の長岡輝道さん。『瘋癲老人日記』には、主人公が買い物に行く「河原町二條東入ル筆墨商竹翠軒」として仮名で小説に登場するシーンもあるほどです。筆を買い求める人は老若男女。太さや手の馴染みから、書き味まで、用途や好みは千差万別とあって「どのような書体の字を書かれるのか、どのような絵を描かれるのかをまずは尋ねます。その後にじっくり試し書きをしてもらうんです」。今はなきチンチン電車が通ることに伴って二条通が広げられ、店の広さは半分ほどになってしまったというものの、長岡さんの言葉に筆への並々ならぬ愛情と、品物への自信が垣間見えます。

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撮影/伊藤 信 取材・文/大和まこ 間取りイラスト/瞳堂 『婦人画報』2016年8月号「感動の京都」掲載 2016年10月04日掲載

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