今週のだるまさん

終日行而未曾行 終日説而未曾説

日本最大級の禅寺の塔頭「妙心寺退蔵院」の副住職 松山大耕さんによる「禅語」解説。禅の教えや悟りの境地をあらわした「禅語」には、今日も明日も、心豊かに暮らすヒントが隠されています。毎週月曜日更新。

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[しゅうじつぎょうじていまだかつてぎょうぜず しゅうじつといていまだかつてとかず] 禅のバイブル、碧巌録に出てくる禅語。一日中行じたのに、その形跡すら見えない。一日中話したのに、話したという跡がない。達人の境地です。
 
学生時代、ある老師に連れられ、アメリカで1週間坐禅会に参加したことがありました。初めての本格的な坐禅会。しかも、老師は私の目の前で坐っておられました。開始数時間で私の足は痛さで耐えられなくなり、もぞもぞ動いてしまいます。しかし、老師はピクリとも動かれない。
 
坐禅会が終わったあと「老師はあんなに長時間坐禅をして痛くないのですか」と尋ねたところ、「わしゃ、寝とるんじゃ」と飄々と答えられたのです。
 
もし、本当に寝てたらグラグラしますが、1週間朝から晩まで坐禅中はピクリとも動かれない。達人とはこういう方のことを言うのかと非常に印象的だったのを思い出します。スポーツ選手でも一流の選手は練習のあとを全く周囲に見せないと言います。どんな業界でも努力や苦労の跡を残さないのが一流の証なのでしょう。
 
“shujitsugyoujiteimadakatsutegyousezu syujitsutoite imadakatsutetokazu”
All day practicing, but still nothing practiced.  All day preaching, but still nothing preached.
 

まつやまだいこう●京都生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。2011年日本の禅宗を代表しヴァチカンにて前ローマ教 皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年より世界経済 フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するなど、世界を股にかけ、宗教の垣根を越えて活動中。次世代を代表する若手宗教家の一人。著書に、『大事なこと から忘れなさい ~迷える心に効く三十の禅の教え~』など。
 
文=松山大耕 写真=伊藤 信 イラスト(だるま)=瞳堂

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