今週のだるまさん

好事不如無

日本最大級の禅寺の塔頭「妙心寺退蔵院」の副住職 松山大耕さんによる「禅語」解説。禅の教えや悟りの境地をあらわした「禅語」には、今日も明日も、心豊かに暮らすヒントが隠されています。毎週月曜更新。

170417_koujinakinishikazu

 
 
[こうじなきにしかず] よいことがあれば、必ず悪いこともある。どちらもないのが、本当の好事。
  
私の友人で、NYでドキュメンタリー映像を撮っているディレクターがいます。数年前、アメリカで宝くじの高額当選者のその後をテーマにした映像を撮影したそうです。宝くじに当たって一夜のうちに大金持ちになるという夢を見たことのある人も大勢いると思いますが、実際に当選した人はどうなるのでしょう。
 
彼曰く、高額当選者のその後の人生は2つのパターンのどちらかになると言います。まずは、突然大金持ちになって、急に人が大勢自分の周囲に寄ってくる。いろんな事業に手を出し失敗して、結局は元の状態よりも状況が悪くなるパターン。もうひとつは、同じように慣れない大金の扱い方を知らず、だまされたり無駄遣いを繰り返してしまい、気づいたときにはほとんど手元にお金が残らない。そして、例えば元々トレーラーハウスに住んでいた人だとすると、元の場所に戻って、テレビだけが大きなものになっている。結局は、元の生活に戻ってしまうというパターンだそうです。
 
人生、ずっと良いことが続くことはありえません。逆に、ずっと悪いことが続くこともない。
 
良いこと、悪いことに一喜一憂せず、とらわれることなく、身の程を知ってしっかり足元を見つめる。どんな立場でも重要なことではないでしょうか。
 
“koujinakinishikazu”
Even a good thing isn't as good as nothing. 

まつやまだいこう●京都生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。2011年日本の禅宗を代表しヴァチカンにて前ローマ教 皇に謁見、2014年には日本の若手宗教家を代表してダライ・ラマ14世と会談し、世界のさまざまな宗教家・リーダーと交流。2014年より世界経済 フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席するなど、世界を股にかけ、宗教の垣根を越えて活動中。次世代を代表する若手宗教家の一人。著書に、『大事なこと から忘れなさい ~迷える心に効く三十の禅の教え~』など。 
 
文=松山大耕 写真=伊藤 信 イラスト(だるま)=瞳堂
 

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